家計アドバイザーに求められる職業倫理
顧客利益の優先
家計アドバイザーは、家計のプロとして必要な情報の提供とアドバイスをし、具体的な方法を提案する事が求められます。その際、顧客にとっての利益を最優先に考えることは言うまでもなく、顧客が認識していない部分にも十分な説明をし、現時点での収支にとらわれず将来にわたって継続可能なプランを提案しなければなりません。
個人情報の守秘義務
家計アドバイザーは、顧客の家族構成や職業、家庭の収支状況などを細かく知る必要があります。このような情報を顧客の同意を得ることなく外部に漏らす事はゆるされません。故意でなくとも情報が漏れる事は顧客の信頼を裏切るだけでなく、社会からの信頼も失うことになります。
顧客への説明義務
家計アドバイザーが顧客に具体的な方法を提案する場合、現在の状況だけでなく将来におけるリスクについても顧客の理解が得られ、意思決定ができるように、十分に説明をする必要があります。また、顧客の有する知識に配慮し、顧客自身で家計管理が出来るよう丁寧な説明が求められます。
法令遵守(コンプライアンス)
家計アドバイザーは、金融商品販売法・消費者契約法・保険業法などの法令を遵守し、常に適切に活動しなければなりません。
家計アドバイザーの業務と関連法規
家計アドバイザーは、顧客の家計に関わることにより様々な法律や制度に接する機会があります。例えば、収入に関して説明する場合、社会保険や所得税について説明が必要となりますし、離婚問題や相続問題の相談では民法の知識が必要となります。個別具体的な提案においては、金融商品取引法や保険業法などを遵守した行動が求められます。これら関連法をよく理解し、特に税理士法や弁護士法に抵触することなく、専門家と連携した業務を行う事が必要となります。
税理士法
家計アドバイザーは、収入・所得・課税所得・可処分所得の区別を顧客に説明するなど、税に関する知識は必須となります。住宅購入時の住宅ローン減税や金融商品にかかる源泉分離課税、相続・贈与税など、常に現時点の正しい税の知識を保有していることが求められます。ただし、顧客サービスであったとしても、確定申告の代行などの業務にあたることは税理士法に抵触するため、あくまで確定申告書の手引きなどの正しい公的資料を用いた説明にとどめておきましょう。納税は国民の義務であり、各個人が自身で確定申告ができる程度の知識は必要であることを伝えていきましよう。
弁護士法
弁護士の業務である法律相談や法律事務(遺言書の作成)などの弁護士法に抵触すると疑われる業務はしてはいけません。家計アドバイザーとして、顧客から家庭問題などの相談があった場合、調停の流れや相続時の実務など知っておくと役に立つ情報はあります。また、家計管理という観点でのアドバイスも必要となるかも知れません。その様な時には、専門家と連携できるように情報収集をしておくことが必要です。
保険業法
家計アドバイザーが家計の相談を受けた場合、必ず加入済み保険の内容の確認が必要となります。基本の部分をしっかりと顧客に説明でき、顧客の理解を得る事が必須となります。ただし、保険募集人資格(内閣総理大臣の登録)を持たない家計アドバイザーが保険の募集や勧誘、販売をすることはできません。保険会社も登録された自社の保険募集人以外のものに保険の募集を委託することは禁止されています。
金融商品取引法
金融商品取引業者の登録を受けていない家計アドバイザーは、具体的な投資助言や運用を任される行為は金融商品取引法に抵触します。ただし、家計管理のアドバイスの中で、顧客の家計にとって有益な投資か、または資産保有目的に適合しているのかなどの適切な判断は必要となり、リスクやメリットにつての分析と顧客に対する説明のための知識は常に保有すべきです。
消費者契約法
家計アドバイザーとして消費者契約法に抵触するような行為は考えられませんが、家計に関する相談の中で顧客が消費者契約法に違反するような商品の購入をして困惑しているケースなどに接することは考えられます。顧客アドバイスとして適切な対処ができるように、違反のケースなどについての情報収集が必要です。
著作権法
他人の著作物を著作者の承諾なしにコピーすることは禁止されています。家計アドバイザーとして資料の作成には著作権法に留意し、出典を明確にするなど適切な利用を心がけましょう。また、家計アドバイザーとしての知識を充実させるために必要となるデータは積極的に取り入れるようにしましょう。
(利用可能な著作物)
・法令や条約、判決など
・国や地方公共団体より発行されている資料や報告書
(例)税務署に設置してある確定申告の手引き、厚生労働省「厚生労働白書」、総務省統計局「家計調査」など